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Hello the Masking Face 店主敬白&番頭日記

釣具を扱うビンテージタックルウェアハウス「Hello the Masking Face」の主と番頭が綴る日記です。

店主敬白20131011 遅ればせながら、主よりのご挨拶

遅ればせながら、主よりのご挨拶


こんにちは、主ことジャン・ショーキチーニョ・アルジです(嘘)。
いつもお世話になっております。
本日は私自身について、この我々の商店について、ご挨拶も兼ねましてお話ししたいと思います。

私の本業はミュージシャンです。1993年にスパイラルライフというグループでデビューし、今年で芸歴二十年となる音楽と自然と機械を愛する変態親父です。
SHOKICHI ISHIDA OFFICIAL WEB SITE http://scudelia.net/(リンク)
七歳より祖父の手ほどきからフナ釣りを始め、十一歳からルアーフィッシングを楽しんでまいりました。

今から二十年も昔、まだインターネットも黎明期でアナログモデム28800kbpsなんかでピーヒョロロロロロローなんて音で電話回線から繋いでいた時代に、空前の釣りブームというよりもブラックバスブームが起こりました。
どの釣り場に行ってもそれはそれは大変なモッシュ状態で、誰も彼もがバス釣りをしていた大変な時代でございました。

魚より釣り人の方が多いんじゃないかってくらい何処もかしこも釣り人で溢れかえり、誰もが釣果を求めてこぞってソフトベイトばかり使いまくり(常吉リグなんてのもこの頃考案されました)、明らかに企業も絡んだバスのゲリラ放流も繰り返され、日本中の釣り場が荒廃しました。
この現象によって私のバス釣りに対する考え方が変わりはじめ、なんとなく足が遠のいてしまいました。

そんな折り、静岡県の清水町にあったプロショップハシモトのご店主に大きな影響を受け、ルアー釣り本来のあるべき姿の求道を啓蒙する姿勢に心酔し、自身でもルアーフィッシングプロテスタントを念頭に置いたネットショップ「Hello the masking face」を開設しました。

当時は新しいテクノロジーによるハイテクフィッシングタックルの開発合戦が凄まじく、シマノの「カルカッタ」やダイワの「トーナメントZ」など、それ以前の道具からみたら恐ろしく精密で高性能なタックルが次々と姿を現し始めた頃でした。

時代はまだバブル景気の余波があり、加熱する釣りブームの中突如として増えたにわかフィッシャーマン達が訳知り顔でビンテージタックルを漁りまくり、旧い釣具の相場も急騰しました。主に「Abu Ambassador」ですけども。
日本におけるフィリプソンの商標争いなんていう事件もありましたね。

当時の「Hello the masking face」で私が標榜したいくつかのテーマは以下の通りでした。今にして思えば随分偏った謂わばルアーフィッシング右翼な思想ですが、まあ若気の至りと笑ってお読み下さい。

1. ソフトベイトは使用するべからず
これは二つの理由がありました。まず第一に、釣れ易いから使うという安易な考えはそもそもルアーフィッシングの概念からは遠くなり、師ハシモトの言葉を借りれば「そうまでして魚が欲しいか」となります。
単に魚が欲しけりゃ餌釣りで釣った方が、なんなら投網でとった方が早いじゃないか。何故君はわざわざルアーを使って魚を釣りたいのか、ちゃんと考えたことがあるのか?という武道的ハードルアー精神論。
二つ目に、根掛かりによって湖底に残されたワームをバスに限らずありとあらゆる水辺の生物(鳥類・爬虫類・哺乳類も含む)が食べてしまうことで腸閉塞による変死、根掛かりで絡まっていたワームと釣り糸はそこに絡んだままなので食べたことによってその場所に幽閉され動けなくなって死亡など、根がかりワームによる二次災害が相次いでいたこと(芦ノ湖漁協はこれを案じて日本で初めてワーム禁止にしました)への危惧。
この二点においてソフトベイトを禁じ手とする心得を大声で触れ回っておりました。

2. キャッチ&イートを徹すべし
キャッチ&リリースというのは一見美しい言葉のように聞こえますが、本来これはアメリカ北部やカナダなどの河川でサーモン/トラウトの種の保存の為に一人が持ち帰れる魚体数を定め、そこに達したらストップフィッシング、ストップしたくない人はキープせずに全てリリースするというライセンス制度のルールから成り立っており、例えば日本のバスのようにゲリラ放流により増え続けて自治体がリリースを禁止にする程の魚種に対してはまったく意味が違うものとなります。
(因みに芦ノ湖のバスは非常に美味です。現在は放射性物質の問題で持ち出し禁止になってしまいましたが芦ノ湖のバスは一食の価値ありでした。)
獲った獲物を食べるというのは自然の摂理においてごく自然なことです。何も罪に感じることはありませんし、自分が釣った魚は逃がすけれども回転寿しでマグロを食うのはOKでは矛盾が生じます。
確かに日本でもリリースすべき魚種もいますが、そういった魚はむしろ釣ること自体を自粛すべきでは、と、そんな諸々の思いがあり、針にかけて傷つけた魚は美味しく頂きましょう、というかなり小うるさい親父の小言のような主張がありました、当時。

3. 兎に角クローズドフェイススピニングリール推し
七歳から釣りを始めた私も二十代中頃までは当然のようにスピニング(「ABU Cardinal C4」他)とベイトキャスティング(「シマノ バンタム」「ダイワ ファントム」等)という装備で釣りをしていましたが、師ハシモトの教えによりABUのクローズドフェイススピニングリールによるトラウトフィッシングを味わったが最後、なぜこんなに素晴らしい道具に光が当たらないのかと、この不遇さと不公平感が私のロック魂(笑)に火をつけ、活動の大きなモチベーションになりました。
スピニングリールはその構造から宿命的に糸ヨレが起こったり、巻き弛みからまとまった糸がドワっと出てしまうライントラブルが起こったりなど、折角の釣りの時間を台無しにする残念な欠点をいくつも持った道具です。メーカーは大金を投じてこれを防止するツイストバスターなる機構を開発したり努力してはいましたが、当然値段も高くなり、根本的には変わらないままの道具です。
ABUはその三十年以上も前から糸ヨレもバックラッシュも起こらない素晴らしいリールを世に出していたわけですが、特に日本ではクローズドフェイス=初心者・子供用と意味もなくレッテルを貼る癖があり、普及しませんでした。
このリールの普及の為に私は覆面リールという単語を作り、ニフティサーブの釣りのフォーラムからこれを発信して行きました。

4. バーブレスフックの推奨
フックをバーブレスに変えることは様々な利点があります。まずフッキングが早く掛かりやすくなる。当然です、針が刺さる上で障害となる出っ張り(返し)がないのですからサクっと刺さりやすくなります。返しがないことでバラし易くなると思われがちですが、私の経験上統計的に見ると返しの有無でそれが大きく変わるとは思えません。
単にそう思い込む釣り人が多いだけで実際にはそれでバラしが増えることより掛かり易くなる利点の方が優っていると思います。
安全面から見てもバーブレスは非常に有効です。釣り針による事故は毎年各地で起こっていますが、私も過去に頭部にルアーが刺さってしまいこれが全く抜けず夜間救急に運ばれ、メスで頭皮を切開して取り外された経験があり、言うまでもなく返しがあることによる弊害です。もし事故が起こってしまった場合もバーブレスであれば直ぐに抜く事が出来る為怪我も最小限で済みます。
そしてなにより、魚へのダメージが少なくてすみます。特にリリースを前提とした釣りをする方は魚に余計な傷をつけずに返すことはとても意味があると言えるでしょう。

というような、言ってみればただのルアー右翼的な理念で若きミュージシャンは無駄に熱く燃えておりました。私の理念に賛同して下さった釣り人達がこのネットショップの掲示板に集まり、いつもワイワイガヤガヤと議論しておりました。(あの当時のみなさんの中に今またこのページを見てくれた方はいらっしゃるでしょうか…)

仕事で年に一〜二度イギリスに行くことがありましたので、現地の釣り具店の殆んどが行っている下取り制度によって買い取られた中古の「ABU 500」シリーズを買い漁っては、それをシコシコと修復しては販売しておりました。バスブームの最中、ビンテージ釣り具の人気は殆んどがオールドアンバサダーへ集中していましたので我々のようにトラウトフィッシングを中心としたアングラーのネット活動はあまり大きな波にはなりませんでしたが、一部バス雑誌でもインダビューして頂いたりなどそれなりに注目はされていたようです。二千年を過ぎ、芦ノ湖もワームの使用が禁止になり、やがて河口湖でも禁止になり、バスブームも沈着しました。私もイギリスにあまり行かなくなりましたし、親父の小言のような主張を繰り返し叫ぶ必要も薄れていき、私は店を閉めました。2002年頃だったと思います。

あれから十年以上たち、釣り具はさらにハイテク進化を続けまさに21世紀の道具となりました。昔からしたら信じられないような高機能で軽い道具ばかりです。兎に角情報が溢れ、超高性能なタックルばかりになり、これだけあったら魚が釣れない方がおかしいくらいの万全装備で取り囲まれた釣り環境。

ねえ、なんだか釣りの世界がギスギスしちゃってないですか?
そんなに効率ばかり求めてしまって楽しく休日を過ごせていますか?
そりゃあ釣れないより釣れた方がいいでしょうけどそれ以外にも楽しめる豊かさってありましたよね??

こんな時代だからこそ、私達が子供の頃雑誌の広告に眩しく憧れていたノスタルジックな道具を使って、便利過ぎないレトロな道具を使って、人と競う為ではない自分自身のゆっくり流れる時間を堪能する為に、釣る為だけの釣りではなく釣りを味わう釣りの為に、そんなことを実現しやすい「手触り」を持ったビンテージ釣り具を集めて、皆様にご紹介したいな、そんな気持ちになりました。
以前のように釣りのスタイルについて口煩く人に説教などしたくもありませんし、そんな元気ももはやありません。
釣りの腕もまったく向上していません。
でも、それでいいと思うんです。人と比べなくたっていいじゃないですか。
ブログで釣果自慢出来なくたっていいじゃないですか。
バスボートなんて持ってなくたっていいじゃないですか。
電車とバス乗り継いで釣りに行ってもいいじゃないですか。
陸っぱりでゆっくり遊べはいいじゃないですか。
釣れなかったら昼寝したっていいじゃないですか。
釣れない釣りも釣りのうちだって子供に教えてあげたらいいじゃないですか。
貴方の時間は貴方だけのものです。貴方らしい釣りのスタイルで、貴方らしいこだわりをもって、美しいと思える釣り方で、道具で、まだまだ続く長い人生をゆっくりゆっくり、楽しんでみたいと思いませんか。

幸運にも私と同じ気持ちを持ち且つ小まめな気配りと行動力をもった番頭さんと再会することが出来(かつての「Hello the Masking Face」のお客さんでした)、彼と二人で「Hello the Masking Face」を再び始めようと考えました。

以前はイギリスから仕入れてきた道具を多忙な仕事の合間に一人で修復し一人で販売していましたので月産一個しか出展できませんでしたが、これからは番頭さんと手分けしながら無理せず楽しく運営していけたらいいなあと思います。

そしてなにより。

十一歳の時にABUやFenwickに憧れながらも国産タックルでルアーフィッシングを始めた私もあっという間に四十五歳になってしまいました。十五年前とは違い、私自身が、もっと楽な思考で子供の頃に好きだったスタイルの釣りを見つめ直し、楽しみ直したいなあと思っています。
手始めにバスのトップウォーターなどから。
「仮面の下からこんにちは」。若気の至りから名乗った斜に構えた名前ですが、これからはこの名前を謙虚な意味で名乗って行こうと思います。
こちらのページがまた皆さんの野次やツッコミで賑やかな場所になることを楽しみにしております。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。


◆「Hello the Masking Face」については、以下のページをご覧ください。

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