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Hello the Masking Face 店主敬白&番頭日記

釣具を扱うビンテージタックルウェアハウス「Hello the Masking Face」の主と番頭が綴る日記です。

店主敬白20140309 少年釣具酔夢譚 その三

少年釣具酔夢譚 その三

一つお断りしておきますが、このシリーズ連載は全て店主石田の少年時代の記憶によって記述しています。
今の時代便利なもので何か調べ物をしたければインターネットで簡単に検索が出来、それが正しいか間違っているかの検証もされないまま勝手に転載して知ったかぶった記事が書かれるなんてことも日常茶飯事です。
どの機種が何年に発売になったなんていう話もその時代のカタログがあれば検証も出来ますがそこを正確に書くかどうかはここでは問題にしていませんし、静岡の田舎町の私達少年がどんなものに触れ出会って来たかを実体験に基づいて書き記すものです。
同様に、大人になってから知ったことも極力書きません。当時の記憶だけです。悪しからず。


何才の時だったか忘れましたが、箱根の芦ノ湖にマス狙いで釣りに行きました。箱根湾の岸からルアーを投げていた時、ちょっとお洒落な帽子と銀ブチの眼鏡のお兄さんが6フィートくらいのベイトロッドにABUの2500Cをつけており、ラインの先には見たところ5g程のスプーンがぶら下がっておりました。
そんな軽いルアー、ベイトリールで投げれるわけないじゃん、バックラッシュして終わりだよククククとほくそ笑んだ私の目の前で、ビュンとロッドを振る音がしたかと思うとシューっと綺麗な放物線を描いてスプーンは40m程も飛んで行きました。

びっくりしました。

当時のダイワのベイトキャスティングリールしか知らない私達からしたらそれは魔法のようでした。
絶対に不可能と思われました。それ程までにダイワとABUの性能は乖離しておりました。どんなにABUのリールを寸法だけ真似ても性能は足元にも及ばないのがダイワのリールでした。

ここで一つ大きなポイントがあるのですが、80年代くらいまでの日本では欧米のものを真似るということは別段恥ずかしいこととは思われておらず、言って見ればコピー品を作ることは当たり前のこととされていた節があります。
例えば楽器。アメリカ製のギブソンフェンダーエレキギターをどれだけ正確にレプリカント出来るかという今思えば盗作と思えるようなことが堂々と産業化されていましたし、その技術の特化によってフェンダージャパンなる本家のオーサライズによる国産メーカーまで出来た程です。音楽の世界では欧米の作品をパクるなんてことは90年代でも横行しておりました。
それくらい、日本という国は欧米の産業には元々敵わないと深層心理的に誰もが思っており、釣り具などでも当たり前にコピー品が作られ、その筆頭がダイワでした。
考えてみれば日本のリールのコピー技術が評価されてアメリカのメーカーのOEMをダイワ、オリムピック、大森工業などが担っていたわけですから、楽器と同じことが起こっていたわけですね。丁度今現在、世界中の工業製品の製造を中国が一手に担っているような、そんな存在がかつての日本でした。

さて。ABUと国産との圧倒的な性能差。一気にその間合いを詰めたのがシマノでした。シマノの躍進はアメリカのLew'sの依頼によって生産したBB/BMから始まります。
(ここでシマノBM1で画像検索どうぞ)
まずは言うまでもなく圧倒的なスプール回転の滑らかさ。ラインを巻いていない状態でクラッチを切り指でスプールをクルッと回すと、ABUのリールならしゅるるるるるっと一秒か一秒半くらい回るところを、シマノはしゅるるるるるるるるるるーっと三秒も四秒も回転し続け、子供ながらにびっくりしたものでした。
因みにダイワはしゅる、で終わりでした。

これはクラッチを切った時にスプールからレベルワインダーが分離することによる完全なスプールフリーの実現も大きく貢献していたでしょう。
レベルワインダーの分離機構はそれ以前にもへドンのリールにありましたが、これはレベルワインダーが前に倒れるような構造だったと記憶しています。(へドンのリールとは言え製造していたのは日本のオリムピックでしたのでその性能はダイワと似たり寄ったりでしたし。)レベルワインダーが止まるということは、ラインが出て行く時に左右の端に巻かれていたラインに対しては抵抗になってしまいます。
その為BM/BBはレベルワインダーを前方方向にぐっとせり出す形でラインとの角度を浅くし抵抗を減少させるという、それまでの円形や楕円のベイトキャスティングリールの常識から一歩先に進んだ構造の革命でした。

更にシマノはバンタムで目ん玉が飛び出るくらいの軽量化を実現します。
(ここでシマノバンタム100で画像検索どうぞ)
アンバサダーの5000番台は軒並み300g強だったところにBM1/BB1は少し軽いくらいでしたが、バンタム100はなんと210gという超軽量化の快挙を成し遂げます。しかもシルバーに輝くボディには蔦柄の美しいレリーフと品のあるローズウッド(!)のハンドル、右側についたメカニカルブレーキの為に三本足になったスタードラッグ、どこまでも個性的で美しい機能美。勿論スプール回転はしゅるるるるるるるるるるー。
あまりにも唐突に世界を追い越し突き放したのがバンタム100/200/100EXでした。
ロッドのほうでもヒノウエ社が同じアルミシルバーに蔦柄のレリーフのデザインでレスターファインシリーズを併せてリリース、圧倒的かつそれまでになかった新しい様式美が聳え立つように完成しました。78年か79年のことだったと思います。記憶では79年。

さて。ダイワがこれを黙って見ている筈はありませんでした。歯軋りしながらダイワが仕掛けた必死の攻撃とは一体何だったのか。

つづく。


◆「Hello the Masking Face」については、以下のページをご覧ください。

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