Hello the Masking Face 店主敬白&番頭日記

釣具を扱うビンテージタックルウェアハウス「Hello the Masking Face」の主と番頭が綴る日記です。

番頭日記20140526 「RYOBI VARIUS F200 Spectrum」

どうもどうも。
春先に管釣りでフライをやって以来、未だに釣りに行けずにいる番頭ですか?
はい、そうです。番頭です。

ビンテージ、と呼ぶには新しすぎる感はあるものの、現在お持ちのかた以外にとっては思わず「懐かしい」と言ってしまうような、そんなリールを友人から一時的に預かっています。
いつもと違ってこれはお売りするワケにはいかないのですが、せっかく手元にあることですし、今回はこのリールを紹介しようと思います。
2000年前後に発売されていたリョービのベイトリール「VARIUS(バリウス) F200」です。

「Abu Ambassadeur」で言うと「2500」とほぼ同等のサイズで、標準スペックは重量250g、ギア比は6.1:1で、PEの1.5号を100m巻くことができます。
アルミの鍛造マシンカットフレームを採用しているために剛性感があり、当時としてはギア比がかなり高く、糸巻き量も十分。また、ハンドルを巻かずとも、クラッチボタンの右側を押し込むことで、ON/OFF状態をいつでも自在に切り替えられるほか、レベルワインダーにはラインを傷めないようSiCリングがあしらわれていたりと、今改めて見ると、非常に実用的で悪くない、どころか、かなり魅力的なスペックです。

ちょっと変わった色合いをしているのは、この個体が「スペクトル」という限定モデルであるため。
両サイドプレートがイオン処理されたチタン製で、虹色に光る、いわゆる「オーロラカラー」というとても個性的な外見をしています。
そういえば、Abuの「Revo」というリールにも「オーロラ」という虹色に輝くモデルがありましたね。
あれは確か「チタンコーティング」でしたけど、この「バリウス スペクトル」の場合はプレート自体がチタン製のようです。

今となっては釣具事業部が上州屋の一部門となってしまったリョービですが、昭和40年代前後から日本の釣具業界を牽引してきた大メーカーのひとつ。優れた製品を数多く世に送り出してきました。
この「バリウス」は、ロープロファイルな「イクシオーネ」という姉妹機が先行発売されていて、機構的にはそれとほぼ同じ。おもしろいのはモデルによって、「マグネットブレーキ」と「フライングアームブレーキ」という2種類のブレーキが使われていた点です。
写真の「F200」の“F”はまさにフライングブレーキを搭載していたモデルであることを意味しています。

「フライングアームブレーキ」というのは、当時としてはなかなかに珍しい、「制動力を調整可能な遠心ブレーキ」です。
遠心力によって浮き上がったブレーキアームがプレートに押しつけられて制動力を得る構造で、サイドプレートにあるダイヤルを回転させることで、アームとプレートの距離が変わり、ブレーキ力の調整ができるようになっています。
ブレーキ力を最大にしたときの絶対的な制動力がもう少し高くてもいいようには思いますが、それにしても、アイデアは秀逸で、なかなかよくできたブレーキシステムだと思います。
※追記:調べてみたら、標準状態ではダイヤル中央でもブレーキが効きすぎて微調整が難しく、4本あるフライングアームを2本に減らすのが当時流行りのチューニングだったそうです。「絶対的な制動力」は十二分だったんですね。

はっきり言って、若干重いかな?という以外は、最新のリールにも引けを取らない使い勝手。サイドプレートのねじ穴の位置や、リールフットの取り付けかたなど、設計として垢抜けないところも散見されはするものの、いや、いいリールです。
すでに補修用パーツが底をつき、メーカー修理に出しても修理不能で戻ってくることもあるようですが、状態のいい個体があれば、個人的にも欲しくなってしまいました。

さて。
当店は現在、ヤフオク!にクローズドフェイススピニングリールの名機「Abu Garcia 1044」や、落ち着いたデザインが素敵な「Abu 520」、軽量で使い勝手のよい「Shakespeare �� 002」など、10台のリールを出品中です。

http://openuser.auctions.yahoo.co.jp/jp/user/shok914

皆さまのご入札、心よりお待ちしています。
それでは、「Hello the Masking Face」をどうぞご贔屓に。

◆「Hello the Masking Face」については、以下のページをご覧ください。

Webページ
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SiCリングが装着されたレベルワインダー。PEラインの仕様もまったく問題ありません。


この「F200」はダイヤルで微調整可能な「フライングアームブレーキ」が搭載されています。臍下部には「TITANIUM」の文字。


クラッチボタンの右側だけが上方に伸びているのがわかりますか? ここを奥に押し込むことで、ハンドルを回すことなく切ったクラッチを戻すことができるのです。


4カ所のリベットで固定されたリールフット。
サイドプレートのビスは、サイドプレートをフレームに固定するためのものではなく、フライングアームブレーキのシステムを取り付けるためのもの。このマイナスのネジを外しても、サイドプレートは外れません。


ハンドル側のネジを外すと、反対側のサイドプレートが外れるという、初めて手にした人にはちょっと戸惑ってしまいそうな構造なのも、この機種の特徴です。
当時流行っていた「シャフトレススプール構造」を採用しています。


スプール側面に見える2つの黒い突起が「フライングアームブレーキ」のアーム部分。遠心力で浮き上がり、サイドプレート側のステンレスプレートに押しつけられることで制動力が発生します。
記憶ではアームは4本あったと思うのですが、2本しかありませんね。
調べてみたらやはり標準では4本で、2本に減らすチューニングを行うことで、より微調整が効くようになる、とのこと。なるほど。



4本のネジで固定されているステンレスプレートにアームが押しつけられて、制動力が発生します。
サイドプレートのダイヤルを回すと、このプレートの高さが変わるのです。
なんという秀逸なアイデア