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Hello the Masking Face 店主敬白&番頭日記

釣具を扱うビンテージタックルウェアハウス「Hello the Masking Face」の主と番頭が綴る日記です。

店主敬白20140913 少年釣具酔夢譚 その五

店主石田です。暫くあいてしまいましたが、連載を再開したいと思います。
ぜひこのタイトルのバックナンバーから読み返して頂けますと幸いです。

 

店主敬白20140305 少年釣具酔夢譚 その一

店主敬白20140306 少年釣具酔夢譚 その二

店主敬白20140309 少年釣具酔夢譚 その三

店主敬白20140314 少年釣具酔夢譚 その四

 

昭和56年、日本のルアーフィッシング史上恐らく最大のセンセーションとなり、アングラーにも市場にも最も大きな影響を与えたであろう一冊の本が刊行されました。そのタイトルは、

Sports Fishing No.4
How to Play Topwater Bassing

著者(というか監修)はTRGC(東京ロッド&ガンクラブ)の則弘祐・山田周治・若林務の三方で、トップウォータープラグでバスを釣るにはどうしたらいいか、どんな道具で釣ったらいいかということを、各メーカーに自信のあるタックルをもって来させて全てフィールドテストを行い、採点をグラフ化してしまうという恐ろしい方法で彼らの考えるトップウォーターバスフィッシングを可視化した、大変に分かりやすく且つ独断に偏った名著でありました。
(はいここでHow to Play Topwater Bassingで検索どうぞ)

本書はHow to Play Topwater Bassingという同タイトルの本の二冊目で、半年程前に出版された一冊目は具体的な道具のことや技術のことはあまり触れられておらず、三方が考えるバス釣りのフィロソフィーみたいなもなを延々対談する内容でした。
これに続く第二弾として、メーカーに持ってこさせた商品一つ一つを挙げて検証するなんていう大胆な企画、比較広告も禁じられていた昭和のあの時代によくもまあ通ったものだと感心します。

トップウォーターの釣りオンリーにフォーカスを当てて一冊書くというだけでもエポックメイキングなのに、それまで日本で出版されていたルアー釣り入門的な書物や日本でのルアーフィッシングの常識とまったく異なる記述のオンパレードで、目から鱗がザクザク音を立てて剥がれ落ちるのを日本中の釣り少年が経験したはずです。

「スローテーパーの柔らかいグラスロッドがベストである」
え!ルアーで釣れる魚はデカいし引きが強いから先調子で硬い竿じゃないとダメじゃなかったの??売ってるルアー竿みんな先調子なのに??

「ディレクターチェアに座って肘掛けに腕を置いて手首の動きだけ竿のトルクだけで投げる」
え!剣道みたいに大きく腕全体で振って全身で投げないと飛ばせないって他の本に書いてあったよ??

「大きく弧を描くように高くゆっくり投げ、ユルユルポトンと着水させる」
え?ライナーでビシュって投げないと距離が出ないよ??

「且つ、障害物の半径50cm以内に正確に落とし、落としたら水面の波紋が完全に消えるまでビタ一文動かしてはならない」
えー!!そんなギリで投げたら引っ掛けちゃうし、波紋消えるまでなんて何分かかるかわからんやん!

「ルアーの最初のアクションは、チョン、だけ、更にまた波紋が消えるまで待ち、落としたところから動かさない」
えー!ルアー動かさなかったらアクションできひんやん!!

とまあ、何から何までそれまで言われていたルアーフィッシングの常識とはかけ離れた内容のオンパレードで、それはそれは尋常でない破壊力でした。

そんな本が、日本で販売されている国内外ほぼ全ての釣り具メーカーに道具をもってこさせて、これはいいこれはダメだとバッタバッタと斬りつけていくのですから、こりゃあもうメーカーもたまったもんではなかったはずです。その中でリールで言えばABU、ロッドで言えばフェンウィックあたりが高評価なのは言うまでもないことですが、ここで大きなプロモーショントリックが仕込まれていました。

How to Play Topwater Bassingで検索すると出てくる画像を見るとわかりますが、表紙をめくった最初のページ、つまり表紙の裏側、いわゆる表2というページですけども、ここが「バス狂いの、スミス」という広告ページになっています。
このスミスの広告ページにはスーパーストライカー(この頃はまだスーパーストライクではなかった)のロッドにフルーガーの2600・2800がセットされており、紙面の内容でもスーパーストライカーのFO-60リザーバースティックとGO-102とフルーガーのリールは完全に依怙贔屓なスーパーハイスコアになっていました。つまりスミスのプロモーションタイアップ雑誌だったわけですね。

スーパーストライカーに関してはこの三方も開発に助言していたのでしょうから好みの仕様に作られていることはわかるとしても、フルーガーに関しては現在でもebayなどで日本人が高値で入札して買い漁る不自然なカリスマ的人気が尾を引く現象、これは間違いなくこの時のこの本と輸入元であるスミスが仕掛けたマーケット戦略による影響で、それが35年経た今でも継続している現実に、いかにこの本の影響力が凄まじいものであったかを物語っています。

当店では現代まで続くこの異常なフルーガー信奉に大いに疑問をもっており、私も一つ2800をもっていますがそこまで評価出来る優れたリールとはとても思えず、60年代にシェイクスピアに買収されて以降製造もシェイクスピアが行い実質的にシェイクスピアの一ブランドとなった中でそっくりの形状/構造の1980〜1984シリーズというはるかに作りのよいシェイクスピアブランドのリールがありながら、作りの粗末なフルーガーの方が日本での定価もABU並みに設定され不自然にブランド力を高く設定しこの本のタイアップもあり見事成し遂げた当時のスミスの戦略に感心すると共に、我が日本民族コマーシャリズムの前には簡単に腰砕けになる弱さに悲しい思いを覚えます。

何よりこの本の残念なことは日本製のリールが殆んどけんもほろろに扱われており、あまりに公平性にかけていたことです。前項で私も書いた通り、世界のベイトキャスティングリールの革命は(60年代のフリースプール化と)70年代後半にシマノによってもたらされたロープロフィール化にあります。
特にバンタムシリーズは想像を絶するスプールの滑らかさだけでなく軽さと低価格化まで実現し、言うなればリールの産業革命とまで言っても良かったと思います。そんな国産リールに対し、遠心ブレーキが効かない(決してそんなことはないのに)、みな似たようなデザインだ(それが新しいトレンドになるのに)と、その評価にはなに一ついい所がありませんでした。僕たちの独断と偏見で評価させてもらったと書いていしたが、その偏見がこれほどまで後の社会にも影響を与えるとは当時ご本人達も想像だにしなかったことでしょう。

私たちHELLO THE MASKING FACEは、歴史と真実は検証出来るをモットーに、歴史の影に埋れた不遇なれど優れた機能をもつ道具たちをこの国で紹介していきたいと考えています。
機械は嘘をつきませんし、スペック以上の動作はビタ一文あり得ません。ギア比4.3:1のリールはどんなに速く手を回しても5:1にはなりません。パーツの破損しやすいリールはどんなにデザインが美しくとも壊れてしまえば釣りになりません。

そう考えますと、人間が余計なロマンを勝手に盛らない限り、機械は正しく私たちに答えようと仕事をしてくれますし、そういった実直な道具を選ぶのが賢く道具と付き合い、貴重な休日を無駄なトラブルに泣かされることなく釣りという素敵な趣味に集中して過ごせるコツなのかもしれません。

長くなりました。続きはまた。




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それでは、「Hello the Masking Face」をどうぞご贔屓に。